ゲン担ぎをしないというゲン担ぎ
今週のお題「ゲン担ぎ」
例えば大事な試合の前に、
例えば重要な商談の前に、
人はそわそわする。
万全の準備をしたはずなのに。
もうあとは天命を待つだけなのに。
それなのに、そわそわする。
だから人はゲンを担ぐ。
私の大学時代の同級生には、試合前に必ずグラウンドに右足から入る人がいた。
その友がある試合の開始直前、整列している時に横にいる私にこそっと耳打ちしてきた。
「今日左足から入ってしまった。もう無理や。勝たれへん。」
この発言を聞いたとき、
「勝たれへんってなんだよ。勝とうよ。お前の左足はそんなに邪悪なのか?確かにちょっと臭いなとは思ってたけど。それは右足もだろう?」
と妙に冷静に思ってしまった。
そこで、
「大丈夫。お前は左足もすごいよ(主に臭いが)。」
と意味不明な慰めをしておいた記憶がある。
案の定その試合の彼は散々な結果だった。
試合後に私は彼に言った。
「果たしてそれはゲン担ぎなのだろうか。
むしろマイナスに作用してないか?
ここまでくるとゲン担ぎというより呪いなのではないか。
だとしたら、ゲン担ぎをしないという行為をゲン担ぎとすることが、最も安全なのではないか。」
その次の試合、彼は左足からグラウンドに入った。
今までのゲン担ぎをなくすためだ。
またその次の試合、今度は右足からグラウンドに入った。
その次は左足、右足、左足、、、、
と気づけば彼は交互に踏み入れていた。
「右足の次は左足にしないと、ゲン担ぎになってまう。左足の次は右足にしないと、前と同じようなことになってまう。だから交互にしてんねん。」
新たなゲン担ぎが生まれた瞬間である。
それも前より複雑になってる。
どうせ
「前の試合どっちの足から入ったか忘れてもうた!」
とか言うんだろ?なあ?
この一件以来、私はゲン担ぎをすることを完全に辞めた。
頼ってもいいことがない。
ただ、ゲン担ぎってカッコいいですよね。
「大事な商談の前夜は、必ず靴を磨くんです。
磨きながら、今までの準備を思い出して、明日のイメージをするんです。」
これだけで、さながら情熱大陸である。
てってってーてーてー である。
なんか、かっこいいゲン担ぎが欲しいなあとも思う今日この頃。