海外生活と嫁と筋肉と

25歳で大手企業を辞め、海外企業に転職、嫁と一緒に海外生活している人のブログ。

「今まで読んだ本で一番はなんですか?」に対するベストアンサー

今週のお題「読書の秋」

 

「今まで読んだ本で一番はなんですか?」

 

「本を読むのが好きです」

となけなしのコミュ力を発揮した後に待ち受ける、第二にして最大の関門である。

 

さながら地獄門である。

一切の希望を捨てなければならぬ。

 

たった1つの質問によって、そんな状況に追いやられる。

なぜそうなるのか。好きな本を言えば良いだけではないか。

そう思われる方もいるだろう。

その主張は間違っていない。間違ってはいないのだが、少しはこちらの話も聞いてほしい。

 

途中理解が及ばなくても最後まで静かに聞くこと。いいね?

じゃないと傷つくから。

 

好きな本はなんですか?

好きな映画は?

好きなアーティストは?

今まで行った旅行先でベストは?

このような質問に対し、正直に答えることが私にはできない。

 

理由は2つある。

1つは、その後の展開を考えてしまうから。

もう1つは、へぇ〜、そんなのが好きなんだ。という顔をされるのがいやだから。

 

1つめの理由はいたってシンプルである。

私はヨーロッパ12ヶ国を1ヶ月ひとり旅した経験がある。

という話をすると、大抵、どこが一番だった?と聞かれる。

何のしがらみもなく、正直に答えるなら、

ベルギーかクロアチアスロヴェニアあたりを挙げたいところである。

あそこでの経験は無二のものであった。

しかし、私パリかバルセロナベネチアあたりを言うようにしてる。

その方が会話が盛り上がるから。

正直に答えてしまうと、

は?スロヴェニア?どこ?

と賑やかだったはずの会話に休符が置かれてしまう。

通ぶってんじゃねーよハゲ(ハゲてはいないが)という顔をされること請け合いである。

 

そこからみんなが興味を持つトークを繰り広げる実力は私には、ない。(ハゲてないよほんとに)

 

つまり、マイナーどころを正直に言えないのである。

 

そして、2つ目の理由は、メジャーどころを言えないというところになる。

 

「おまえ本好きって、有川浩とかミーハーかよ」

西野カナ?ふ〜ん(ニヤニヤ)」

 

これが怖い。

所詮映画化したやつしか読まないんだというレッテルを貼られ、裏で悪口を言われるに決まっている。

ひいては人事部に伝わり、人事考課に影響するのであろう。軽はずみな発言が出世に響く。

 

同じような理由で、ブランド物の服だとか小物だとかもあまり身につけたくない。

ブランドロゴを全面に押し出したような財布とか、いくらそのブランドが良いものだろうと控えたい。

「ああ、ヴィトン的な人なんだね」

って思われるのがイヤでしょうがない。

なので、服はユニクロとか、ちょっといいやつを買う場合も、ブランドロゴが目立たないものにする。

 

 

王道は避けたい、けどマイナーすぎもダメ。

気づいたら異常に高いハードルが眼前に現れていた。

 打開策はただ1つ、

みんなが知ってるギリギリのラインで、かつセンスの良いものを答える。

これである。

おわかりいただいていると思うが、

この時点で私の個人的な感情とは関係ない話になっている。

 

では、表題の「一番好きな本」に対するベストアンサーはなんだろうか。

マイナー過ぎはダメ。

「ジョイスとか面白いですよね」なんて言った日には異端者扱いされ、最悪魔女裁判にかけられてしまう恐れがある。

 

村上春樹が好きです」

これはこれで盛り上がる可能性はあるが、

「ハルキストかよこいつ」って思われるのがイヤだ。

 

もちろん、状況によって答えは変わるはずだが、

私なりに考えたベストアンサーは、

 

アルジャーノンに花束を

 

 

これである。

マイナーではなく、ミーハー感もあまりない。

ドラマ化とかされているが、ドラマによって話題になった類のものではないし、いわゆる過去の名作にカテゴライズされる。

 

それに、海外の作家という、少しおしゃれな感じも匂わせ、翻訳も秀逸。

構成も面白く、なにより泣ける。

話を広げられる可能性を多分に含み、

「へぇ〜、ダニエル・キイス好きなんだぁ」と言われる心配もない(ダニエル・キイス派なんて聞いたことないから)。

以上のことが、今回の受賞理由である。

 

今後は『アルジャーノンに花束を』で乗り切っていきたい所存である。

 

ちなみに、個人の意見とは関係ないとは言ったものの、本当に名作だと思っている。

読んだことないという方がいれば、ぜひこの機会に読んでみてほしい。

 

望んだものを手に入れた先に何が待っているのか。どんな姿勢で世界を見れば幸せになれるのか。

そういったことを考えさせられる、泣ける。